更年期障害は40代〜50代の女性のおよそ60%以上が発症する病気です。

しかし、その多くが病院に行くほどの大げさな症状ではないもののなんとなく調子が悪いと感じており、長引く自覚症状を少しでも和らげるためにどうしたらいいか悩んでいるという相談がネット掲示板などで多く見受けられます。
特に上半身が火照って所構わず大量の汗をかくホットフラッシュや、ちょっとしたことでイライラしてしまう不定愁訴などはなんとかしたい自覚症状です。
症状がひどくなって日常生活に支障をきたすようであれば基本的には婦人科での治療が前提ですが、忙しい現代女性はそうも言ってられません。まだ仕事や日常生活に支障がでない範囲であればなんとかセルフケアで改善しないものかと思うのも無理からぬことでしょう。
今回は病院に相談する前の段階の更年期障害の自覚症状をセルフケアする方法を紹介していきたいと思います。

スポンサーリンク


更年期障害の症状を和らげるためにしておきたいこと

疑問を感じる女性

更年期障害のセルフケアと言っても、やみくもに対策をたてても時間とコストを無駄にするだけですので自覚症状を和らげる対策を講じるためには更年期障害の発症メカニズムを知るところから始めることが重要です。
更年期障害は文字どおり更年期に起こる体調不良の総称です。
では更年期とは一体いつ頃のことを言うのでしょう?
一般的には女性は45歳〜55歳頃、男性は40歳頃から60歳頃までを更年期と呼びます。
また男性の場合は後ほど説明しますが、女性にとっての更年期は「閉経」という生理現象が基準になります。産婦人科学会が発表しているガイドラインには「閉経前後の5年ずつ(つまりつごう10年間)を更年期という」と定められています。
個人差はありますが日本人女性の平均的な閉経を迎える年齢は50歳から51歳なので45歳から55歳頃までが更年期ということになります。そして「閉経」とは12ヶ月以上生理が完全停止してしまうことで女性にとっては大きな体調変化を迎えることになるのです。
なぜなら女性にとって生理周期とは体調を左右する重要な生体リズムだからです。閉経=生理が完全停止するということはこの生理周期が大きく乱れ閉経後は全く来なくなってしまうことになります。
すでに多くの女性は「生理周期」について把握していることと思いますが、ここで復習しておきましょう。
指差す白衣女性
生理周期は2種類の女性ホルモンによって制御されています。
・まず、月経と同時にエストロゲンという卵胞ホルモンの量が増えていきます。
エストロゲンには血管を拡張させて基礎体温を下げ、コラーゲンの生成を促して副交感神経に働きかけ心身の安定をもたらす作用があります。この時期を卵胞期または低温期と言います。月経が終わってもエストロゲンの量は増え続け、やがて排卵を迎えます。
・排卵の後半から今度はプロゲステロンという黄体ホルモンが増え始めます。排卵期(4日〜5日間)に受精できなかった卵子は次の月経で経血と一緒に排泄されていきますが、プロゲステロンは次の月経に向けての準備期間に生理周期を安定させるための重要なホルモンです。
またこの時期は黄体ホルモンの増加とともに血管が収縮し血液の流れが強まるため基礎体温が上がるので黄体期(もしくは高温期)と呼ばれています。プロゲステロンが増加するときにはPMS(月経前症候群)と呼ばれる更年期障害とよく似た症状が起こりやすくなります。(肌荒れ、イライラ、頭痛、多汗、火照り、下腹部痛、不正出血など)
卵胞ホルモンも黄体ホルモンも女性の生涯を通じて分泌されていますが、閉経前までは卵巣から、そして閉経後は副腎皮質から分泌される性ホルモンを利用することになります。
更年期になると閉経に向かい卵子や女性ホルモンを分泌している卵巣を始めとする女性器官の働きが低下していきます。そして閉経を迎えると一部の機能を除いてほとんどが停止してしまうことになります。
その過程でまだ卵巣が活動している閉経前でも次第に生理不順が頻発するようになり、閉経の1年前から来なくなってしまうのが女性の閉経です。そしてこの更年期にホルモンバランスが崩れてしまうことから起こる数々の自覚症状のことをまとめて「更年期障害」と呼びます。
したがって閉経は全ての女性に訪れる生理現象ということになります。
胸を抑える女性
また近年男性の更年期も徐々に認知されるようになってきました。
男性には閉経はありませんが加齢からくる代謝の低下によって女性とほぼ同様に40代〜60代にかけて精巣の機能が低下しホルモンバランスが崩れ更年期障害と同じような自覚症状の数々を感じるようになります。女性の更年期障害に対し男性側はLOH症候群と呼んで区別しています。

性ホルモンと自律神経のバランスそして更年期障害

これで更年期と更年期障害がどうして起こるのかがご理解いただけたと思いますが、ここからはどうして性ホルモンのバランスが乱れると更年期障害が発症するのかを説明していきます。

性ホルモンの製造器官は女性の場合は卵巣、男性は精巣になります。しかし、その分泌量をコントロールしているのは自律神経です。
女性の場合を例にすると、生理周期に合わせてまずは視床下部というところから性腺刺激ホルモン(ゴナトトロピン)が直ぐ隣にある脳下垂体という部位に向けて放出されます。
ゴナトトロピンは性ホルモンの分泌量を記した指示書のような物質で、脳下垂体ではゴナトトロピンの指示通りにFSHという卵胞刺激ホルモンとLHと呼ばれる黄体刺激ホルモンを合成します。
これを血液中に放出して卵巣に届け、卵巣ではFSHとLHの内容にしたがって女性ホルモンを合成しその結果を視床下部に送り届けます。
これが生理周期をコントロールする仕組みなのですが、この流れが最も潤滑に行われているのは20代でそれ以降は次第に性ホルモンの分泌量が下降線をたどっていきます。そして40代を迎えると本格的に閉経へと向かい始め更年期を迎えるのです。
更年期になり卵巣機能が低下すると視床下部へのフィードバックが滞りがちになり、生理周期をコントロールしている自律神経が混乱をきたします。これがまず更年期障害が発症する大きな原因となります。
つまり、更年期障害とは自律神経失調症の一種なのです。
吐き気を我慢する女性
自律神経は生理周期や性ホルモンの分泌量を制御する以外にも内臓を動かしたり体温を一定に保つなど生きていくのに必要な活動を制御しているとても重要な中枢中の中枢神経です。したがって自律神経失調状態が長引くと心身には実に多様な不具合を起こすことになります。
また、自律神経はさらに2つの神経に大別されます。一つがエストロゲン(女性ホルモン)の刺激を受けて活性化する副交感神経で、主に体のメンテナンスを担当する神経です。
もう一つはテストステロン(男性ホルモン)の刺激で活性化する交感神経でこちらは意欲や集中力を向上させる神経です。女性の場合は更年期になるとエストロゲン不足から副交感神経が鈍化しメンテナンス不良をきたし更年期障害へと発展します。
これに加えて40代から50代というのは社会的な責任感の重圧や私生活でのストレスなどが重なりやすく、それが高じるとただでさえ乱れがちなホルモンバランスに悪影響を及ぼして自律神経も乱れがちになります。
この3つの条件が揃うと更年期障害が高い確率で発症することになります。
ところが、更年期が過ぎると副腎皮質から分泌されている性ホルモンで再び自律神経が正常に活動するようになり更年期障害は終わりを迎えます。

更年期障害を和らげるための対策

これまでの説明で更年期障害が起こる理由がご理解いただけたと思います。そこで少しでも更年期障害を和らげるためにはこうした原因を排除していくことが重要となります。

どうしても日常の生活や仕事に支障が出てホルモン補充療法などの治療を受ける必要性が生じるのは全体の20%程度とされているので、多くのケースでは病気とまでは言えないまでもなんとなく体調不良を感じている程度ということになります。
そこで以下に紹介するような方法で更年期障害を和らげる対策を講じるようにしてください。
・栄養バランスの取れた食事をとる:更年期とは老化の始まりでもあります。胃腸を始めとして様々な内臓の機能が少しずつ低下していくので、栄養バランスと消化に良い食事をとるように心がけてください。
特に更年期に意識して取りたい栄養素は「大豆イソフラボン」、「ビタミンE」などです。大豆イソフラボンはフィトエストロゲンと言ってエストロゲンとよく似た組成を持ちます。不足しがちになるエストロゲンの代わりに活躍してくれる物質なので大豆加工食品の豆腐や豆乳などを積極的にとるようにしましょう。
またビタミンEにはホルモン分泌調整力があります。血行をよくする働きもあるのでホルモンバランスが乱れて代謝が落ちる更年期には意識したい栄養素です。ナッツ類やアボカド、かぼちゃなどに豊富に含まれています。
・生活習慣を整える:自律神経はその時々の状態によって適宜交感神経と副交感神経を切り替えながら私たちの命の営みを支えています。生活リズムを整えできるだけ規則正しい生活を送るようにするとそのパターンを自律神経が記憶して切り替え時に消費される性ホルモンの量が相対的に少なくて済みます。
元来自律神経の切り替え時には副腎皮質から分泌されている少量の性ホルモンで十分なので、不規則な生活で必要以上の性ホルモンが消費されることを防ぐと自ずと更年期障害は軽減していくことになります。
特に女性の場合は寝ている間に活躍する副交感神経が鈍化しやすくなるため寝る時間と起きる時間を一定にすることでエストロゲンの消費を節約することが可能になります。
・運動を心がける:更年期以降になると代謝が下がりがちになります。そこで体を動かして代謝を上げることで自律神経の乱れが起こりにくくなり、更年期障害のリスクが低下するということが解明されています。
実際に統計上でも運動習慣のある人はない人と比べて更年期障害が軽度で済むかあるいは自覚症状を感じにくいというデーターが公表されているのです。また運動によって得られる健康効果は年齢に関係なく得られるものなので運動習慣のない人はぜひ更年期障害対策として運度を取り入れるようにしてください。
ただし、無理をしてハードなトレーニングを行うと怪我の元になりますので、最初はウォーキング(1時間/1日)程度を目安に毎日継続可能なところから始めましょう。ヨガやストレッチなども更年期障害の改善効果が確認されています。
・婦人科で診察を受ける:これらの対策を実践しても体調不良が改善しない場合は更年期障害が重症化していることが考えられます。更年期障害の確定診断には婦人科を受診して血液検査を行ってもらいホルモンバランスの状態を把握することが重要です。
また更年期以外にも女性器疾患や消化器疾患を起こしている可能性も考えられますので、体調不良が長引いたり強い時には無理をしないで婦人科を受診するようにしてください。

まとめ

一旦発症すると辛い自覚症状が長引いてしまうのが更年期障害です。

中にはうつや不眠症、腰痛など深刻な症状を覚えるケースもあるのでどうしても体調不良が長引いたり強い自覚症状を感じている場合には無理をせずに婦人科で適切な治療を受けることが重要ですが、それほど強い症状ではない場合には本文で紹介したような対策を講じるようにしてください。早めの対策を講じるほど重症化するリスクが低下します。